(Amebaのブログに以前載せたものの転載です)
「虐待」には、いろんな種類があります。
身体的、性的、精神的(心理的)、ネグレクト・・・
幼い頃に受けた方も、成人してから受けた方もいらっしゃいます。
たくさんのクライエントさんとワークさせていただいていますが、
その中から一つ。
このお話は、幼い頃から父親に身体的虐待を受けた男性の体験です。
子どもの頃に虐待を受けると、どんな影響があるでしょう。
何をしても自信が持てない。
常にビクビクしてしまう。
人を信頼することが難しいか、人とのバウンダリーが緩くなる。
依存しがちになる方もいます。
人間関係、特に親密な関係を築くことが難しい。
心の痛みを解消するためにアルコールや薬物の中毒になる。
人格障がいが起こる。
うつや不安障害を発症するケースも多くあります。
子どもらしい部分が失われる。インナーチャイルドの問題が起こる。
セラピーをする側になると、転移・逆転移を起こしやすい。
などなど・・・。後に複雑に絡み合った問題に発展する可能性が
高いのが、特に幼少期の虐待です。
このクライエントさんは、当時20代だったのですが、
人間関係の構築が難しく、子どもに対しては過剰に守ってしまう
ところがありました。
例にもれず、虐待のことは長いこと家族の秘密にされており、
学校でもどこでも、誰にも言えずに苦しんできました。
カウンセリングなどにも通ったようですが、言語化することが
難しく、望んだ成果を得ることができていませんでした。
プレセッションでお話をして、導入で体をリラックスさせて
意識を集中させていきます。
そして、ニューエイジの30分弱の音楽プログラムを流しました。
音楽が始まると、突然、虐待をされているイメージが現れました。
クライエントがワークをする準備ができていないイメージは
出てこないとは言われていますが、突然の虐待シーンは
フラッシュバックのようでした。
父親に蹴られ、踏まれる子どもの頃の彼がいました。
「お父さん、やめて!!!」
泣きながら訴えます。それでも止まない虐待。
ここで、大人になった彼の視点が加わりました。
「でも、母親がいつも守ってくれた・・・。」
お母さん、ありがとう。
弱くて、ごめんね。
守ってあげられなくて、ごめんね。
もっと強かったら、守ってあげられたのに。
いつも守ってくれて、ありがとう。
そこから、母親との関係を見ていきます。
母親への感謝も、恨みも、嫌なところも出てきます。
どうしていてくれなかったの?
なんで怒るの?
わかってよ!!!
今まで吐き出せなかった感情を表に出すと、
音楽の終わりの方で、
泣いている子どもが現れました。
子どものイメージは、インナーチャイルドであることが
多いのですが、この子どもも、彼の失われた子どもらしい
部分でした。
その子が、泣いています。
その子に向かって彼が言いました。
「今は辛いけど、絶対良くなるから。」
「このままじゃないから」
そして、その子を暖かく、でもしっかり抱きしめます。
そして、泣きながらこう伝えました。
「お前は悪くない。お前のせいじゃない。」
それは、彼の彼自身へのメッセージでもありました。
虐待を受けた子どもは、自分が悪いと思っているケースが
多くあります。
彼は、この時初めて、「自分が悪いんじゃない」と言う事が
できたのです。
それは、前に進むための大切なステップでした。
実は、このクライエントさんとはこの1回のセッションしか
していません。言語による意識化ではなく、GIMという音楽と
イメージを使う体験型のセッションだったからこそ、
「お前は悪くない」と自分に言う事ができたのだと思います。
もう何年も経つのですが、未だに忘れることのできない
記憶に深く残るセッションです。
彼の人生が、輝くものでありますように。
今でも、そう願っています。
*掲載に関して
ブログで紹介するケースは、すべてクライエントさんの許可を
いただいて掲載しています。
クライエントさんの勇気でお許しをいただいています。
無断での転載はご遠慮いただきますよう、お願いいたします。