音楽療法を、みなさんはどのように定義しますか?
お話をさせていただく対象によって、定義が変わるのが音楽療法。例えば今度お話をさせていただく医療の現場では、音楽療法の定義は例えば、「精神的・心理的・社会的・身体的苦痛(トータルペイン)や、ストレス、不安を軽減するため、音楽体験を用いること。医療行為を支えるほか、医療では解決できない場合にそれを補う目的で使われる」のようになるかと思います。ただ、この定義では発達障害のある子どもでは全く使えないですね。
全米の音楽療法学会(AMTA:www.musictherapy.org)の定義の訳はこうなります。
「音楽療法は、臨床と研究に基づき、個人の目標を追求するために、音楽療法課程を終えた資格を持つ音楽療法士との関係において音楽介入を行うこと。
(原文)Music Therapy is the clinical and evidence-based use of music interventions to accomplish individualized goals within a therapeutic relationship by a credentialed professional who has completed an approved music therapy program. (AMTA: https://www.musictherapy.org) 」
私は、基本的に、個人には必要な力が備わっていると考えています。それが弱まっていたり、その力の存在に気づいていない時に問題が生じる。なので、私が音楽療法を定義するとこんな感じになります。
「音楽療法とは、音楽に備わった機能的・芸術的側面を用いて、個人が本来あるべき姿になるために、もしくは、どのような場合にも一番個人らしく『ある』ために、本来備わっている力を最大限に引き出すお手伝いをする療法である」
音楽療法の定義は、対象だけでなく、音楽療法士の個人の価値観も含んでいると思います。私が思うには、確固たる音楽療法の定義は難しいと思うのです。私の定義も、おそらく10年後には変わっているでしょう。ただ、「一人の人間が、個人の利益追及のために音楽体験を使う。」その基本だけは見失わずに、臨床を続けていきたいと思います。
2018・12・3
吉原奈美