摂食障害と音楽心理療法

音楽心理療法で、摂食障害と戦っていらっしゃる方のセッションをしていただく事があります。摂食障害にはいくつかの種類がありますが、テレビや雑誌などの社会的影響が強く見られ、居住地域独自の『美』の価値観に左右される精神疾患です。10代から20代に発症するケースが多いのが特徴で、主に女性に多い障がいですが、10%ほどは男性だと言われています。また、不安障害やうつ病、双極性障害、OCD(強迫性障害)、境界性パーソナリティ(人格)障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などを摂食障害と合併しているケースが多く、アルコール依存症を伴うケースも目立ちます。さらに、摂食障害の診断を受けた方には性的虐待を受けた過去のある方が多いという研究結果も出ています。時には死に至る事もある深刻な病気です。

性格的な要因として、自分に自信がない、自分の価値を下げてしまう、何事もコントロールできない、太ることを異常に恐る、完璧主義、一般的にいう『いい子』、目標を達成することを生きがいにしている等が挙げられます。学校でも『良い生徒』である事が多く、また秀でたアスリートにも多いのが特徴です。自分でコントロールしきれない気持ちや感情をなんとかしようと試みる代用として食べ物をコントロールしてしまい、言いたい事を我慢しがちだったり、人目を気にして人の言う事に従いがちな人に多く見られます。

摂食障害と聞いてまず精神性食欲不振症(神経性やせ症・拒食症)を思い浮かべる方は多いのではないかと思います。感情を押し殺し、自己評価が低いためにより完璧を求め、思考に柔軟性がない方に多いのが特徴です。神経性食欲不振症に罹ると、現実が歪み、やせ細った自分の姿を鏡で見ても太っていると実際に太っていると思い込んでしまう事があります。このため、問題意識が低く、周りのサポートが大切になります。痩せていくのに加え、食べ物を細かく刻んでいたり、食器の上で食べ物を並べ直していたり、人のために料理はしても自分では食べないなどの特徴に周りが気づく事が重要です。また、食べてはいても、運動をしすぎるという特徴に出る方もいます。

神経性過食症(過食症)は、過食の後に吐いたり、下したりしてしまう行動(代償行動)を伴う障がいです。自己評価が低く、罪悪感にかられ、衝動的なのが特徴です。神経性食欲不振症に比べ、自分で行動がおかしいと認識しているケースが多いです。下地としてある不安から過食をする事で、一時的にストレスから解放されたように感じますが、太ることへの恐怖から吐き戻したり、下剤を使ってからだから排出するという行動に出ます。それでも再び罪悪感にかられ、その不安からまた過食してしまうというサイクルを繰り返します。

他にも、いくつかの分類があり、過食性障害などに加えて、最近では過度にオーガニック、ビーガン、デトックスなどに拘り一部の食品しか受け付けなくなるオルトレキシアという新型の摂食障害も認められています。

音楽心理療法では、障がいの根底にある自己評価の低さをワークしたり、不安の原因を心や体の中に探求、過去のトラウマとの向き合い、自己受容などをお手伝いしていきます。『いい子』であるために押し殺してきた感情を解放する事も大切ですが、感情と向き合うことへの恐怖から自己コントロールへの執着が生まれている場合もあります。これにより、感情をワークするのは簡単でない場合もありますが、体験型のセラピーのため、音楽の刺激によって体に溜まった感情を言葉を介さずに見つめて行く事も可能で、イメージという形で現れたものを間接的にワークしていく事もできます。少しずつ心と体に課してしまった制限やこだわりを解いていくことで、より自分らしく、より自分として楽に生きていけることを目指していきます。

 

 

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